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[Taka-Talk]Jazz is what!? It is!

僕が、ジャズと呼ばれる音楽に対して思い入れが強く、こだわりを持ったジャズタップダンサーであるという事をご存知の方々も少しずつ増えて来た様で、近年は、タップを学ぶ後輩達から『ジャズをもっと学びたいんですけど、どうすれば良いのか教えて下さい!』という方々が増えて来ました。

タップダンスをやってる方は、ジャズと呼ばれる音楽で踊る機会が多いので当然と言えば当然ですが、僕は沢山聴く事だと思います。

ただ、ジャズと一言で言っても、多種多様で、1900年代初頭に生まれてからたったの100年ほどの短期間にも関わらず、急速に変化をして来た音楽ですが、時代や演奏スタイルやミュージシャンによって、全く異なりますので、まずは聴き比べて、ご自分の好きなスタイルやミュージシャンを探してみると良いのではないでしょうか?

というワケで、時代や演奏スタイルや代表的なミュージシャンを簡単にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

《ニューオリンズ・ジャズ》
1910年頃に生まれたスタイルで、この成り立ちは、1800年初頭にアフリカ大陸から強制的に連行され、過酷な労働を強いられてた黒人達によって歌われてた〈ブルース〉、1865年の南北戦争での南軍の敗北によって南軍の音楽隊の楽器が安価で売り出され、楽器を手にした貧しかった黒人達によって演奏されてた〈ブラスバンド・マーチ〉、1800年代後期に黒人教会で歌われてた〈スピリチュアルズ(黒人霊歌)〉から派生した音楽に、ピアニストが右手のメロディーはシンコペーションを多様し、左手は常に2ビートを刻むという演奏スタイルの〈ラグタイム〉等の影響や西洋音楽の理論も加えた音楽で、アドリブを多用するジャズと呼ばれる音楽の原型です。

ルイ・アームストロング(tp、vo)
キング・オリバー(cor)等

《スイング・ジャズ》
ニューオリンズで産声を上げたジャズが一般受けする様になった1930年代には、バンド編成も10名から20名程の大所帯になった事からビッグバンド全盛期と呼ばれる様になりました。

この頃には黒人のみならず白人のミュージシャンやコンポーザーも現れ、また、各ビッグバンドには専属の歌手やダンサーも所属し、サミー・デイビス・ジュニアや、フランク・シナトラが脚光を浴び始めたのは、この時代からであり、ジャズと呼ばれる音楽の第一次黄金期と言われています。

デューク・エリントン(pf)、カウント・ベイシー(pf)、ベニー・グッドマン(cl)、グレン・ミラー(tb)等

《ビ・バップ》
モダン・ジャズと称されるスタイルの最初が、このビ・バップです。

ビッグバンドで毎晩ダンスの伴奏をする事に飽きたミュージシャン達が、仕事後に、ジャズクラブに集い、繰り広げられたジャムセッションが始まりであり、僕の師匠であるジミー・スライドを含めたジャズ・タップダンサー達もタップシューズを楽器に、ジャズ・ミュージシャンとして熱いセッションを繰り広げてたそうです。(つまり、ジャズ・タップは演奏でもあるという事ですね。)

また、この演奏方法は、曲のテーマを演奏した後で、コード(和音)進行に沿ってアドリブを繰り広げるモノで、スイング・ジャズの様なダンスの伴奏の為の音楽ではなく、曲とミュージシャン達のアドリブを楽しむという新しいスタイルで、1940年代に生まれました。

チャーリー・パーカー(as)、セロニアス・モンク(pf)、バド・パウエル(pf)、ディジィー・ガレスピー(tp)、デクスター・ゴードン(ts)、ポール・チェンバース(b)等

《クール・ジャズ》
1940年代後期になると、ビ・バップのスタイルは、ほぼ完成しましたが、豊かで自由な即興性に比べ、構成力の豊かさに欠けると考えたマイルス・デイビスがビ・バップ(ホット・ジャズ)に対するアンチテーゼとして、当時の名アレンジャー、ギル・エバンスを編曲者として採用し、フレンチホルンやチューバを加えて、緻密な編曲を施したアルバム〈クール・ジャズの誕生〉を発表します。

また、同時期(正確にはその少し前)に、盲目のピアニスト、レニー・トリスターノが、ビ・バップとは全く違ったアプローチをした理知的で、メロデックなスタイルを確立させます。

また、このスタイルは、リー・コニッツ(as)等、多くのミュージシャン達を魅了する事になりました。

マイルス・デイビス(tp)、レニー・トリスターノ(pf)、リー・コニッツ等

《ハード・バップ》
1900年代中盤(正確には1955年)になると、ビ・バップでのコード進行ではは飽き足らなくなったミュージシャン達が、コードを更に細分化し、より早いテンポで演奏する様になりましたが、同時に細分化された為に、アドリブにも制約が多くなり、他のミュージシャンとの違いが少なくなって来ました。

それを脱却する為に、この後、マイルス・デイビスやジョン・コルトレーン等によってモード・ジャズが誕生する事になりました。

アート・ブレイキー(ds)、クリフォード・ブラウン(tp)、リー・モーガン(tp)、ウエス・モンゴメリー(g)、ウイントン・ケリー(pf)、レッド・ガーランド(pf)、ソニー・ロリンズ(ts)、マイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)等

《ウエストコースト・ジャズ》
第二次世界大戦後のアメリカ西海岸では、ニューヨークのジャズシーンの不況に対して、映画産業が盛んになり、映画音楽としての需要が高まってました。(1955年頃)

そんな中、白人を中心としたジャズ・ミュージシャン達が映画音楽の作成に本格的に参加し、ニューヨークのスタイルとは一線を画す形のジャズが発展して行きました。

このスタイルの特徴は、ニューヨークの熱いホット・ジャズに対して、クール・ジャズの流れを汲み、知的でアレンジに富んだ演奏スタイルで、この頃に作られた曲の多くはスタンダードナンバーとして、現在でも多く演奏されてます。

チェット・ベイカー(tp&vo)、スタン・ゲッツ(ts)、アート・ペッパー(ts)等

《フリー・ジャズ》
ビ・バップやハード・バップはコード(和音)進行に基づいてソロアドリブを展開していくモノですが、フリー・ジャズに代表されるオーネット・コールマンは、和音を否定する事で和音に縛られない自由な演奏が出来る!という考えの下、ピアノやギター等の和音楽器を除いてアルバムを発表して、当時のジャズシーンで大論争が巻き起こりしたが、次第に和音やハーモニーにとらわれない自由な演奏スタイルは徐々に浸透して行きました。(1960年頃)

また、和音を否定するとは言っても、旋律(メロディー)を重要視してたこの頃の演奏は、タイムもキープされてて、現在のフリー・ジャズの方々が演奏してる様な、拳で鍵盤を叩いたり、タイムさえも無視した演奏とは違い、僕は乱雑なイメージは持ってません。

オーネット・コールマン(as)、セシル・テイラー(pf)、エリック・ドルフィー(bcl)等

《モード・ジャズ》
フリー・ジャズの項目でもお話しましたが、これまでのジャズは『和音は機能を持ったモノであり、アドリブの旋律はその下に成り立つ』という考えの下に演奏されてましたが、ビ・バップからハード・バップに移ると次第にコード進行が複雑になり、『どのプレイヤーの演奏も似たモノになって来てしまう』と考えたマイルス・デイビスは、コード進行に縛られた演奏からプレイヤーを解放すべく、『和音が機能を持つ』という考え方を否定し、コード進行を廃除し、あるスケール(音階)に従ってアドリブをするという奏法を取りました。(1958年)

ハード・バップのエキサイティングで迫力のある演奏に対して、このスタイルは繊細で美しさを持ってると言えます。

尚、フリー・ジャズの様に和音そのものを否定してるワケではないので、和音楽器も用いられました。

マイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ハービー・ハンコック(pf)、ビル・エバンス(pf)等

《新主流派》
1960年代半ば、マイルス・デイビスは、ウエイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(pf)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)らとクインテットを結成し、ビ・バップやハード・バップの良い部分も取り入れ、かつコード進行だけに縛られないというスタイルで演奏し、好評を博しました。

この時期は第二次黄金期と呼ばれ、日本でも数多くの大きなジャズフェスティバルが開催されました。

マイルス・デイビス(tp)、ウエイン・ショーター(ts)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)等

《フュージョン》
これまでのジャズはアコースティック楽器のみでの演奏でしたが、60年代に入ってからは、電子楽器を用いたロックが脚光を浴びており、マイルス・デイビスは、70年代が目前に迫った1960年代後半になると、電子楽器を用い、ブルースやロックやファンクの要素を取り入れたスタイルを生み出します。

また、マイルスに限らず、彼のアルバムに参加したメンバーを中心にジャズに電子楽器を取り入れた演奏スタイルを展開し始めました。

このスタイルは、フュージョンまたはクロスオーバーとも呼ばれる様になり、今やジャズのスタイルの一つというより別ジャンルとして確立してます。

マイルス・デイビス(tp)、チック・コリア(pf)、マイケル・ブレッカー(ts)、ジョージ・ベンソン(g)、パット・メセニー(g)、ジョン・スコフィールド(g)、ジャコ・パストリアス(b)等

《継承派》
マイルス・デイビスが新しい発想で次々に斬新なスタイルを作り、発展させて行くの中で、ウイントン・マルサリスは、これまでにあったジャズの素晴らしさを伝える為、また偉大な先人達への敬意を込めて、あえてスイング・ジャズやビ・バップ等を演奏する様になりました。

また、ジャズは劇的な変化を遂げ、複雑になり過ぎた為に『ジャズは難解で理解に苦しむ音楽』という世間のイメージを払拭する為に、自身の卓越したテクニックを控え目にし、またポップス等の曲をジャズアレンジして親しみ易さを伝える様になりました。

ウイントン・マルサリス(tp)

この様に、ジャズは色んなスタイルへと変化し発展して来たジャンルですが、変化が大き過ぎると原型が無くなってしまうという事にもなりかねませんね。

ちなみに、僕のジャズ・タップは、ビ・バップを主にしたジャズスタイルでパフォーマンスしてるんですよ。

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