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[Taka-Talk]締めなければ緩みます

ご存じの方も少なくないと思いますが、僕らタップダンサーは、金具(タップス)が取り付けられたシューズを履いて、音を奏でながら踊ります。

このシューズに取り付けられてる金具は、女性用のハイヒールのヒールタップスに使用されてる小さ目のタップスを除き、シューズの革底部分に、皿木ネジ(さらもくねじ)と呼ばれる数個の小さいネジだけで、シューズとタップスを固定させてます。

使って行く中で、シューズのソール(靴底)にタップスが徐々に沈み込み、シューズと金具が一体化していき、より引き締まった明確な音になっていくワケですが、取り付けたばかりの新しいシューズは、この{沈み込み}がありません。

使ってるうちにタップスが革底に沈んでいくという事は、ネジを締めなければ、タップスとネジの間に隙間が出来る事になり、締めなければ当然ながら緩み、更に緩んだまま使ってると、ネジ穴自体が広がって締める事の出来ない状態になってしまいます。

俗にこの状態を「ネジ穴がバカになる」と言い、ネジ穴自体を直さなくてはいけなくなるんです。

どういう理由なのかは分かりませんが、ネジ穴やタップスの裏側に接着剤を流し込み、取り付ける方もいます。

ただ、僕がタップスの取り付け加工を教わったピート(ニューヨークのタップス加工の職人さんで引退されてます)からは、「ネジ穴に接着剤を流し込むと、{沈み込み}に対応出来ない」とか「接着剤を使ってタップスをとめるとソールの革の劣化が早くなる」から、絶対にやるべきではない事と教わりましたから、僕は接着剤は使わないんです。

つまり、「締めなければ緩む」んです。

次に、ネジの締め方について書きます。

「ネジを回して締めるなんて簡単!ドライバーを当てて右に回転させるだけなんだから。」と思われるかもしれませんね。

確かに間違えてはいません。

ねじ頭部のプラス形の溝にプラスドライバーの先端を当てて、右に回せば締まり、左に回せば緩みます。

・・・が、ネジを回しているうちに、ネジ頭部のプラスの部分が削れて丸くなってしまって締める事も緩める事も出来なくなったという方も少なくないのではないでしょうか?

ちなみに、この状態を{ネジがなめた}と言います。

そこで、ねじ頭部がなめてしまう事を防ぐ為に、ねじの回し方をお伝えいたします。

まず、最初にネジ頭部のサイズ確認です。

前述の通り、タップスの取り付けに使われてるネジの多くは、小さい皿木ネジの{1番}が使われてる事が殆どです。

どういうネジが使われてるのか?という確認は不可欠ですが、1番が使われてる場合はドライバーも1番、2番が使われてる場合はドライバーも2番という事になります。

尚、日本では、+1、+2、+3もしくは、♯1、♯2、♯3と表記されてる事が多く、1が小さいサイズで順番に大きくなっていきます。

その他にも、♯0とか、♯00という表記のモノや精密ドライバーの様に、もっと小さなサイズもありますが、タップスのネジを締めるのに適切だとは言えません。

あと、海外製に多いんですが、ドライバーサイズの数字の前に{PH}とか{PZ}と表記されてるモノもあって、これは規格の違いです。

パッと見では解りにくいですが、実はプラス部分の形が微妙に違ってて、{PH}のネジに対して{PZ}のドライバーを使うと、ネジ頭部をなめてしまう事があり、逆もまた然りです。

僕の経験上、日本で一般的に販売されているドライバーは{PH}で、タップスに使われてるネジも{PH}である事が多いので、{PH}と表記されてるドライバーを使われると良いでしょう。

おわりに、ネジの締め方ですが、単純に右に回すのではなく、押しながら回す{押し回し}が基本です。

この際、電動工具を使うと、パワーが強過ぎて、ネジ穴をバカにしてしまう危険があるので、ある程度までは、グリップ部分を掌で掴んで{手回し}、ある程度まで締まったら、先端に近いネック部分を指で摘まんで{指回し}をお薦めします。

この締め方は、ネジの締め過ぎによるネジ穴の弛みを防ぐ方法です。

※添付した写真は、約半年使用したタップシューズのタップスを外した状態ですが、見ての通りタップスの形そのままに革底へ{沈み込み}が確認出来ます。

このシューズの所有者は、半年前に念願のカペヂオK360を購入したいという事で、半年前に僕が取り付けました。

引き渡しの際「ネジをこまめに締めて下さいね!」とお伝えしてたんですが、今までは{締めなければ緩む}という認識がなかった為に、全く締めてなかったそうで緩んでしまい、直す事になってしまいました。

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